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ファクタリングとABL(売掛金担保融資)の違いを徹底比較|中堅企業向け資金調達ガイド

著者: ファクセル編集部

中堅企業の財務担当者が売掛債権を活用した資金調達を検討するとき、必ず比較対象となるのが「ファクタリング」と「ABL(売掛金担保融資)」です。どちらも売掛債権を起点とする点では似ていますが、法的性質・コスト・審査対象・調達スピードが大きく異なります。本記事では、銀行ABLとファクタリングの違いを5つの観点で整理し、自社に合う選択肢を判断するための材料を提供します。

ファクタリングとABLの基本構造

両者の違いを理解するには、まず取引そのものの構造を押さえる必要があります。表面的には「売掛金を使ったお金の調達」ですが、契約の本質はまったく異なります。

ファクタリングとは

ファクタリングは、自社が保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、対価として現金を受け取る取引です。法的性質は「債権の売買」であり、融資ではありません。そのため、貸金業法ではなく民法上の債権譲渡に関するルールが適用されます。

ファクタリングは、売掛先(取引先)の信用力を主軸に審査が行われる点が特徴です。利用企業自身の財務状況が一定水準にあっても、売掛先の支払能力が低ければ取引が成立しないこともあります。逆に、自社が赤字決算や債務超過であっても、売掛先が安定していれば利用可能なケースがあります。

ABL(売掛金担保融資)とは

ABL(Asset Based Lending)は、売掛債権や在庫などの動産を担保として金融機関から融資を受ける手法です。法的性質はあくまで「融資」であり、銀行法・貸金業法に基づく貸付として実行されます。

ABLは2007年以降、経済産業省や金融庁が推進してきた手法で、不動産担保に頼らない資金調達手段として中堅企業を中心に普及してきました。借入金として計上され、返済義務が継続的に発生する点はオフバランス効果を持つファクタリングと対照的です。

5つの観点で比較する違い

両者の違いを、財務担当者が意思決定に使いやすい5観点で比較します。

法的性質の違い

最大の違いは法的性質です。ファクタリングは「債権譲渡(売買)」、ABLは「金銭消費貸借契約(融資)」です。この差は会計処理に直結します。ファクタリングで売掛債権を譲渡すると貸借対照表上から売掛金が消え、現金が増えます。一方ABLは負債(借入金)として計上されるため、自己資本比率や有利子負債残高に影響します。

財務指標を意識する中堅企業にとって、この違いは資金調達の選択以上に意味を持つ場合があります。

審査対象の違い

ファクタリングは売掛先の信用力が主たる審査対象です。利用企業自体の決算内容よりも、誰に対する債権かが重視されます。 ABLは融資ですから、借り手である利用企業の財務内容・返済能力・事業継続性が中核的な審査対象になります。担保となる売掛債権の質も評価されますが、最終的に返済責任を負うのは借り手企業です。

赤字決算や税金滞納がある企業はABLの審査通過が難しい一方、ファクタリングであれば検討余地が残ります。

調達コストの違い

コスト水準は両者で大きく異なります。一般的に、ABLの金利は年率数%程度(金融機関や信用力により異なる)に収まることが多いのに対し、ファクタリングは手数料率が取引ごとに設定され、2社間ファクタリングで月あたり数%〜10%超になることもあります。

ただし、ファクタリングは短期で完結する取引のため、年率換算と直接比較するのは適切ではありません。1回の取引コストとして許容できるか、年間で何回利用するかを総額ベースで試算する必要があります。

調達スピードの違い

調達スピードはファクタリングが優位です。ノンバンク系のファクタリング会社では、申込から入金まで最短即日〜数営業日で完結するケースがあります。 ABLは金融機関の与信審査・担保評価・契約手続きを経るため、初回利用では数週間から1〜2か月を要することが一般的です。継続利用後の追加実行はスピードアップしますが、ファクタリングほどの即応性はありません。

担保・保証・債権譲渡登記の違い

ABLは譲渡担保として売掛債権に担保権を設定するため、債権譲渡登記が原則として行われます。これは取引先に直接通知されない仕組みであるものの、登記情報自体は公開されています。 ファクタリングも2社間方式では債権譲渡登記を行う場合があり、3社間方式では取引先への通知・承諾が必要です。取引先との関係への影響を慎重に評価する必要があります。

自社に合うのはどちらか

ここまでの違いを踏まえ、判断の方向性を整理します。

ABLが適しているケース

  • 一定の財務基盤があり、低コストでまとまった金額を調達したい
  • 継続的な運転資金需要があり、コミットメントライン的に枠を確保したい
  • 自社株や不動産を担保に出したくないが、動産・債権を活用できる
  • 銀行との取引関係を強化したい

中堅企業で安定した売上があり、銀行取引のメインバンクが明確であれば、ABLは総合的に有利な選択肢になりやすいといえます。

ファクタリングが適しているケース

  • 突発的な大口受注や決済タイミングのズレを短期で埋めたい
  • 銀行融資の審査に時間をかける余裕がない
  • 借入金として計上したくない(オフバランス志向)
  • 自社の財務内容よりも売掛先の信用力で資金化したい

ただしファクタリングはコストが相対的に高いため、恒常的な運転資金を継続調達する手段としては不向きです。短期・スポット利用が原則と考えられます。

利用前に押さえておきたい注意点

両者を比較するうえで、見落とされやすい点も整理しておきます。

第一に、契約の実態が「ファクタリング」と称しながら実質的に貸付に該当する場合、貸金業登録のない事業者による違法な取引となる可能性があります。金融庁も繰り返し注意喚起を行っており、買戻特約や返済義務が組み込まれた契約には特に注意が必要です。

第二に、ABLの担保評価は景気や取引先の信用変動により見直されることがあります。担保価値が下がれば追加担保や繰上返済を求められる可能性があるため、契約条件を事前に確認しておくことが望まれます。

第三に、いずれの手法でも取引先との関係への影響を考慮する必要があります。3社間ファクタリングでは通知・承諾、ABLでは登記情報が関係するため、取引先の理解を得られる体制づくりが前提となります。

まとめ

ファクタリングとABLは、売掛債権を起点とする資金調達という共通点を持ちながら、法的性質・審査・コスト・スピード・担保の各面で性格が大きく異なる手法です。中堅企業が選択する際は、「短期スポットでの資金繰り改善」が目的か、「中長期での資金調達枠の確保」が目的かを起点に判断するのが現実的です。

どちらが優れているという問題ではなく、自社の財務戦略・取引先構成・調達タイミングに応じて使い分けることが重要です。複数の選択肢を並行検討し、コスト総額・契約条件・取引先への影響を比較したうえで意思決定することをおすすめします。

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